公開: 2019年7月31日
更新: 2019年7月xx日
2008年に起きた米国におけるサブプライム・ローン破綻によって引き起こされた世界的な経済危機によって明らかになったことは、当時の企業経営が極度に企業利益の最大化を重視して、企業の社会的責任を考慮しない「利益主義」的な思想でした。法律に反しない限り、方法を問わず、利益を追及することが企業の経営にあたる経営者の使命であると言う考え方でした。この考え方は、よく「強欲資本主義」や「貪欲資本主義」と呼ばれるものです。18世紀にアダム・スミスが提唱した資本主義の背景には、中世にヨーロッパの世界で確立したキリスト教の倫理観があり、人々の行動は、「自らが救われるために一生懸命に働く」と言うものでした。働いて得たお金も、浪費は悪とされ、余ったお金は社会に寄付することが正しいとされていたようです。そのような、古い倫理観を基本とした資本主義は、経済がグローバル化した後の世界には成立しません。世界の単一市場で勝ち残った企業のみが生き残る新しい資本主義では、企業は事業で獲得した利益を、新しい事業の展開や、企業の経営力強化のために投資するようになりました。これによって、企業経営に携わる人々の賃金は著しく高くなりました。逆に、現場で働く労働者の賃金は、コスト削減のために低く抑えられるようになりました。また、従来の優良企業が行ってきた社会貢献事業も、ほとんど行わなくなりました。これらのことによって、企業の株の値段が上昇するようになりました。株価が上がることは、資本家である株主にとっては、投資した資本に対する利益として還元されるため、歓迎されるため、経営者たちの評価も良くなります。このような循環が生み出され、リーマン・ブラザース社がサブプライム・ローンと呼ばれる貧しい人たちへの貸し付けを債権化した債券への投資が、破綻したことが原因で始まった経済危機は、瞬く間に世界中に広まりました。この時、米国政府は、金融機関を守るために、多額の財政を投入しました。さらに、米国を代表する自動車製造メーカである巨大企業2社に対しても、多額の財政を投入しました。しかし、米国政府は、この経済危機で犠牲になり、失業した数多くの人々に対しては、個人の責任と言う理由で、経済的援助は行いませんでした。この経済危機の後、国民の間の所得の格差が政治的な問題になりました。
そして、米国の一部の政治家からは、巨大企業の社会的責任(税金の公平な負担、従業員の雇用の維持など)を、もっと求めるべきであり、労働者の賃金についてもある程度の保証を行うべきであるとする社会民主主義的な主張が出てきました。2016年の米国大統領選挙戦で、民主党の大統領候補の座をヒラリー・クリントン氏と争った、民主党のバーニー・サンダース上院議員はそのような議員の一人でした。